「山内寿美展ーinside」は本日最終日です。
現代美術の神髄をご覧いただけたことと思います。
次回は全く違うキャラクターデザインの世界です。
「サノエミコ イラストレーション展ーカレミニョン」
四角い動物たちがた~くさんギャラリーに来てくれます。
お楽しみに。
WHITE MATES bldg.1F 1-14-23Izumi Higashi-ku Nagoya Japan Phone052-953-1839
「山内寿美展ーinside」は本日最終日です。
現代美術の神髄をご覧いただけたことと思います。
次回は全く違うキャラクターデザインの世界です。
「サノエミコ イラストレーション展ーカレミニョン」
四角い動物たちがた~くさんギャラリーに来てくれます。
お楽しみに。
初日9月16日にExhibition infoに山内寿美さん本人が書かれたテキストを掲載しました。そこに「・・・醜悪でとても美しい・・・」という言葉がありました。
この展覧会のすべてはこの言葉に集約されていると思っています。
透明感のあるパステルカラーで構成されてはいるがピンや釘がこれでもかと刺さっている。暴力的でさえある。それなのに金属部品にやっぱりキラキラした樹脂がコーティングされていて、なんだか少女的可愛さがある。いや違うな。少女的意地悪さがあるのかな。
少女は最強だ。
少女は無垢ではない。
でも少女は美しい。
海洋汚染物質がもはや排除できないことを知り、内胞という進化を妄想し、作品化する。同時に人の体も当然汚染されていくのだが、心の汚染も免れない。
いやもう全部を内胞して生きていくしかない。
汚染だけではないコロナだって内胞できるのならそうしたい。
生きろ!生き続けろ!
その先に「醜悪でとても美しい」何かが待っている。
アクリルボックスは標本のイメージ。
海洋汚染物質を内胞した生物のあらゆる部位や細胞を集めた。
赤いバスケットは実際に危険薬品などを地震などの災害で事故が起きにくいように工夫された収納アイテム。赤は危険物を意識させるための着彩だそうだ。
ギャラリー内はさながら実験室か研究室。
実験室。
実験室って危険なことが起こっても不思議ではない場所、です。
危険なことが起こる可能性があるから日常から隔離された場所。
山内作品はやっぱりデンジャラスを纏っている。
山内寿美さんが海洋汚染物質を取り込んだ進化をテーマにして2,3年になります。
昨年のコロナ禍が始まったころにはもうこのテーマで作品を発表していたということです。
コロナ禍は世界中の人々の心に重くのしかかりましたが、山内さんとても例外ではなかった。人々はうちの中にこもりなるべく人とは会わないことが最上でした。人は社会的動物でこの行動制限は思いのほか心を蝕むものです。経済的にも不安はどんどん募りました。
作品制作がどれほどの意味を持つのか。
そんな中での作品展示のオファーに彼女の心は徐々に平常を取り戻していきました。
一度取り戻すと、制作は面白くなりどんどん進みます。
初めはドットを描きました。今回の会場にもドットはたくさん出てきます。
「草間彌生を彷彿とさせるね」とはよく言われます。
心の開放に繰り返しはとてもいい。
ドットの延長で丸いプラスチックの頭が付いたピンを刺しました。
プラスチックの頭がドットして魅力的な素材だった。
ドットのための素材だったはずなのに、いつの間にか「刺す」という行為に夢中になっていた。永遠にプチプチを潰すのに似た感覚です。
あれ楽しいですよね。
個展も決まりどんどん作品を作りためてふと作品を振り返ったとき、山内さんは愕然とします。いろんな種類のピンを「刺した」。「刺す」という行為は随分暴力的だ。そんな行為で自分を開放させてきたとはどういうことなのだろうか。
そこから山内さんの内面への追究が始まりました。
[inside]サブタイトルにもしました。
「よくこれだけ素材を集めたね!」と多くのお客様がおっしゃいます。
毎日ブログをお読みくださっている方にはもうお分かりかと思いますが、この個展の作品群にとって素材はとても重要です。
一昨日のウール綿を初めとして何点かは天然素材ですが、ほとんどの素材は合成樹脂などの石油を由来とした合成物質です。どれも海洋汚染物質とほぼ同じ素材だと言ってもいいかと思います。
これらの合成物質はなぜできたのでしょうか。
人間にとって使い勝手が良かったというのが一番の理由だったのではないでしょうか。
手軽に形を作ることができたこと。大量生産できたこと。美しくて丈夫だったこと。安かったこと。
ちょっと考えたってこんなに利点が見つかる。きっとまだまだある。
その結果欲深い人間たちはたくさんの物と便利さを欲しがった。より素敵なものが手に入れば以前手に入れたものを簡単に手放す。
海洋だけでなく環境の破壊は止まらない。
だからこそ山内寿美の妄想は生まれた。
汚れた地球環境を進化の糧にすると。
そうなればいい。そうなるのかもしれない。ならないのかもしれない。
彼女の妄想をあざ笑うことなんてできるだろうか。
くるくると巻かれたひも状のものが納められたものはへその緒なのだそうです。
新しい生命体は次の世代に受け継がれていくことを表しています。
ほとんどの素材は科学的に合成されたものを使っていますがこのシリーズでは「へその緒」はウール綿に大切そうに置かれています。
このウールという素材に山内さんの気持ちが込められているのです。
「へその緒」ということはこの生命体は動物として成長する。
生命への畏敬の念、慈しみの気持ちを込めて動物性繊維であるウールという素材にこだわりました。植物の綿ではなくウールしかも原毛に近い素材を選んだと言います。
さあ、山内作品のバックボーン的ストーリーをブログで紹介するのは今日で終わります。
会期も前半はちょうど今日で終わりますが、いよいよ後半は[inside]の解明に入っていきます。
海洋汚染物質を内胞した新生物に血が通い生命体として内臓もできていった。
この4点は個展会場全体の中でちょっと異色な色使い。
アクリルボックスの中には虹色に反射するフィルムやフェイクダイヤが光を孕む。その多くは合成繊維でできたフェイクシルクの布で覆われ透けて見える。
ほとんどの生物の内臓は直接見ることはない。
見たことのないものや見る機会の少ないものに対して人間は少し及び腰になる。
この作品の前で少し腰が引けるような気持になる人は多いのではないだろうか。それは、この作品が内臓ということだけなのだろうか。
そして、きらりと光るモノたちは美しい、のだろうか。
海洋汚染物質を取り込んで生物が生まれ、それが進化していく。
今までになかった細胞の重なりが新たな生物となる。
皮膚の断面図を目にすることがある。
そんなイメージでこのシリーズは生まれた。
細胞の重なりを標本にしたかのような作りだ。
新しい生物の美しい細胞。
その重なりもきっと美しい・・・はずだ。
たくさんの汚染物質はほぼ石油精製物。
それを内胞した生物は美しくだけでなく最強だ。
山内寿美さんが今回の作品群を作るにあたって最初のシリーズを「内胞」と名付けました。
解決のつかない海洋汚染。
海をきれいにするどころか汚染は止まらずどんどんひどくなる一方だ。
ある時山内さんは、生物は環境に合わせて進化するのだから汚染物質を取り込む進化もあっていいのではないかと妄想したのです。
赤い点は血液が流れていることを表しています。
酸素と水が生命を生み出したように、汚染物質を取り込んで生命体として成立した証なのです。
随分ノーテンキな発想だと思っている方もいらっしゃることと思います。
この話にはまだまだ先があります。
結論ではありません。そもそも結論は無いのかもしれませんが、この展覧会が終わるまでには作品への筋道が分かるようにしますのでお付き合いいただきたく思います。
「Goki &Artists 2021 Autumn」は本日最終日です。
天候不順にも対応できる服は最強。
Gokiの機能美はこんな時にも発揮できるのだと確信しました。
次回は9月16日(木)から山内寿美さんの個展「insaide」です。
環境汚染問題に端を発しコロナ禍をどう乗り切るかを制作を通して独自の世界観を考えました。それはすべて作品に込められた思いとなっています。
強い気持ちを持って臨んだこの個展を多くの方に観ていただきたいと思っています。