伸び盛りー御囲章木版画展

浮世絵のように絵師・彫師・刷り師のように分業していることは今ではそう多くはない。御囲章さんもご多聞に漏れず全部ひとりでこなしている。まさに一人三役。

つまり絵師としての御囲章が職人である彫り師・刷り師の御囲章に発注しているという状態なのだ。

この情熱的な画面はよく制作風景を紹介されている棟方志功のようなのだろうか。「彫り進め」という技法はああいう一気呵成な彫り方は実はできない。綿密な計算のもと一色分ずつ彫っては刷り彫っては刷りと制作している。

情熱的な線を失わないように彫ってほしいと自分が自分に発注をかけていると言ったらいいだろうか。それは限りなく厳しい発注者になることもできる一方、限りなく甘い発注者になることもできるということだ。
御囲さんはもちろん厳しい発注者なのだけど、厳しい分だけ発注前にこれなら忠実に制作してくれるはずの状態にまで持っていく必要がある。どちらにも甘えを許さないのは自分の力量を知っているからこそのこと。

情熱的でありかつ冷静である御囲作品は彼のうちなる厳しさがあってこそであることも見てほしい。

 

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