BODEYは語る・主張する背骨ー音部訓子展

音部訓子さんの絵はのびやかでしなやかな線が魅力です。この絵は50×54㎝の大きめなサイズなので線がとても気持ち良い。

この線をこの大きさで出すには画材(絵具)と支持体(紙)に秘密があります。
音部さんにとってこの大きさにこの線を描くのに伸びのいい油絵具がとても描きやすい。小さい画面ならアクリル絵具でも遜色ないそうですが、大きい絵を気持ちよく描くにはやっぱり油絵具だそうです。

支持体については滑りすぎない多少のひっかりがあるキャンバス系のイラストボードが必需品。

この2つが主流だったのにこのところ画材に異変が起きている。
廃番続出。
これは音部さんだけでなく多くの作家が困っていること。
絵具の色数が減っているとか紙の種類が減っているとか・・・。

絵を描く人の数が減っているらしいということも原因らしいのだが、悩ましいことです。

この美しいのびやかな線をいつまでも見続けたいですね。

ただいまー音部訓子展

子供も動物もほとんど描いたことが無かったのだけれどここ数年よく描いたそうです。

ここ数年・・・
コロナで多くの人々の心が弱っていました。あなたもそうだったかもしれない。音部訓子さんはその一人でした。

こういう閉塞感のある時代に子供は大きな希望です。
希望を見せてくれる身近な子供たちの存在が音部さんにありました。描いてみたいという衝動。描くことによって自分が立ち直っていくのがわかる。

描くことによってしか絵描きは先に進むことができない。
だからこういう時代にものづくりの作家はそこにいて向き合うのがある意味正しい生き方だと思う。

コロナは多くの人の心を弱らせる負の力があった。
その中でどう前に進むのか。負から目を背けることなく描く。作る。

「これで子どもの絵は描かないかもしれない」と時々音部さんはおっしゃっているけれど、そういう言葉が出るということは、もう負から脱出したのだと思う。長く描くことを生業にしてきた人の生き方は強い。描くことでしか解決できないという事実を見せていただいた。

「子供は描かない」という言葉尻を捉えることはやめてほしい。
子供を描くことで見失いそうな希望の光を追うことをしないということなんだと私は解釈しています。

シンプルな情熱ー音部訓子展

アニー・エルノー著「シンプルな情熱」の装丁画のお仕事を音部訓子さんがされたのは20年も前のことだった。エルノーさんが昨年ノーベル文学賞をいただいたことでこの絵に再び光があたったのです。
原画が見たいという皆さんのお声を反映してこの展覧会に出品ということになりました。

文学作品の装丁画を多く手掛けてきた音部さん。
それは音部作品に文学的感性が備わっているからなのだと思っています。
文学的感性って?
それはとても説明が難しいのですが、絵を描くにあたって自分の内面をどれだけみつめているかということにつきるのではないかと思います。

この本の装丁をした方はなぜ音部さんに装丁画を依頼したのだろうか。
きっとそれまで音部さんが描かれた絵の中にエルノーさんの感性を見たのではないかと想像します。

私まだこの本読んでないのですが、なかなか内容は官能的だそうです。どこが通底しているのか楽しみです。

BODYは語る・命は踊るー音部訓子個展

「目は口程に物を言う」とは言うけれど、音部訓子さんの表現は目だけでなく体全体で物を言う。

20年以上も前からこのシリーズを描いています。初めて見たときの感動は今も忘れられません。体全体で感情を表現することのすばらしさ。喜びも悲しみも怒りも内からの感情が体を通して伝わってくる。コンテンポラリーダンスを観ているようでもありました。私自身がこのシリーズの大ファンなのです。

この度この会場でまたこのシリーズを飾らせていただけることはプリズムとしても嬉しいことです。

「命は踊る」
生きる喜びが絵のどこからも伝わってきます。
ポーズ・表情・色
胸に抱えるものは「気」でしょうか。

この作品を含め3点ルーブル美術館内で行われたアートフェアに出品されました。たくさんの国から集まったであろう作品や人々の中に会ったことは喜ばしいことでした。

 

音部訓子展ーノーベル文学賞作品装丁+ルーブル美術館招待作品

イラストレーター音部訓子さんの個展です。

毎年発表されるノーベル賞。
昨秋ノーベル文学賞をとったのはフランス人作家アニー・エルノーさんでした。
その著書の日本語版の1冊「シンプルな情熱」の装丁画を描いたのが音部訓子さん。そのお仕事自体は20年も前だったそうですが、新聞に取り上げられたことから彼女の身の回りは賑わったのです。
「その絵見たい」は多くの方が思ったこと。

パリのルーブル美術館の一角に招待されて3点の作品を出品しました。帰ってきた作品を1度みなさんに見ていただこうと思っていたのにコロナ禍で出鼻をくじかれたようになってしまったのです。

そんな経緯があり、今回の個展になりました。

ここ数年のカレンダーの原画も含めての展示です。

2023年4月20日(木)-30日(日)*火曜休廊
正午ー午後7時(最終日は午後5時まで)

音部訓子さんは会期中ほぼ在廊します。

加藤鉦次個展ー最終日

「加藤鉦次個展」はスペースプリズムも第一会場の「ノリタケの森ギャラリー」も本日最終日です。(プリズムは午後5時まで、ノリタケは午後4時まで)

次回は「音部訓子展」は4月20日(木)ー30日(日)*火曜休廊です。

オキザリスー加藤鉦次個展

この作品が今回最後に描いた絵だそうです。

色も光も他の絵とはちょっと違った趣があります。
未来の加藤作品の片鱗なのでしょうか。

今回多用されていたオレンジが少しくすんでいるのと緑に黒が入ってきていること。そして手前の花と奥の白で奥行きを持たせること。

何か新しいことが始まる予感のある絵です。

画業50年の記念展でしたが、もちろんこれで終わりではありません。
次の50年が始まってもいるのです。

ジャルダンー加藤鉦次個展

今回の個展は滋賀県にあるイングリッシュガーデンを主にしたテーマパークを描きました。ですが、このテーマパークそのものが描きたかったわけではありません。

前にも書いた通りイタリアで見た緑があまりに素晴らしくあの緑への憧憬をここに見るのだそうだ。

齢75歳にして絵を描き始めたころのわくわく感を未だ持ち続けようとする加藤鉦次さんの画家としての生き方。まだまだ続くはずです。

今日の絵は今回のDMにしました。

東屋ー加藤鉦次個展

加藤鉦次さんの絵には緑とオレンジがたくさんあります。
この絵もそうです。

この絵は他の絵とは緑が少し違った効果を生んでいます。
空の色を見ると夕景なのでしょうか。
陽光が薄らいでいくと緑は光を反射せず濃い緑に変わっていく。
光を吸収するのでしょう。

一方東屋の屋根はオレンジ色に輝いています。

光の反射も吸収も時々刻々と変わっていくことを画家の目はどのように観ているのだろうか。

藤ー加藤鉦次個展

今年は少し早いですが藤がきれいな季節になりました。
藤棚の下で花を見上げた時の優美な情景。少し風に揺れる姿はあでやかです。

藤の花を通り抜けた風はたとえ強風だったとしても柔らかさを含み優しさに変わるよう。

今はもうないのだけど、加藤さんのお住まいのお近くに有名な藤棚があった。季節になるとそこで味噌おでんを食べさせてくれる店になるのを目当てに藤のお花見に行ったことをとりとめもなく思い出した。

花より団子な自分。あの優雅な藤の花が絵の中でちょっと悲しそうに揺れた。