
今日から書くブログは情報無く花井正子さんの作品を観たい方は読まないでください。私の言葉できっと見え方が変わると思います。手掛かりが欲しい方だけのために書こうと思います。
15年前に子供の頃の想いを込めて描いた林檎があまりに切なく見えたので、その絵にまつわるエピソードを聞きました。
事情があって花井さんのお母様は幼い子供を家に置いて働かなければならない時期がありました。帰りが遅いと寂しいしお腹もすきます。お母様は林檎を買い置いてくれてあってそれは食べてもいいことになっていました。花井さんが子供の頃は蜜柑より林檎のほうが安価でした。当時の林檎は真っ赤で小ぶりのものがほとんどでした。そんな林檎に思いを託した絵でした。
その絵を描いて数年後にお母様はこの世を去ったのですが、そうやって一生懸命育ててくれたお母様をたまたま一人で臨終を迎えさせることになってしまったのです。花井さんはそれをとても悔いていました。その悔いが辛そうなのを見て、作家はどんなことも絵を描くことでしか乗り越えられないということを信じている私は「林檎の絵を100枚描いてみない」と誘いました。花井さんは「そうする。そうしてみる。」と答えてくれました。
それから10年近くが経ちました。この個展の話があったとき「林檎の絵を描いてみようと思ってね」と。
10年の時間ではありましたが、花井さんは私に会うたびに林檎をくれました。それはあの約束忘れてないからね、というサインだったんです。
今日の作品「うたかたの夢 醒めて 消えて 忘れて 味わう コドモ (繰り返される夜)」は初めて林檎の作品を見せてくれた15年前の作品と私にとって一番印象が近い作品です。それは見た目ではなく私が受け取る感性としての印象です。
