近藤美和さんは海と山のセイレーンを描きました。
水の中のセイレーンは良く知られた存在ですが、山のセイレーンもあります。
海のセイレーンは人魚で山のセイレーンは上半身が人間で下半身は鳥です。
もともとセイレーンは山のセイレーンが主流だったそうですが、今では水の中のセイレーンがよく知られる存在です。
美しい声で歌うセイレーンに人は惹きつけられ近づくと喰われてしまうと言われています。
なぜセイレーン?
「人と動物が合わさった形が造形的に面白いと思い描いてみたくなったのです」と。伝えたかったテーマ以上に「描いてみたい」という画家の欲求は純粋で興味深い。理屈ではなく描きたいという気持ち。
半人半獣。
見てみたい。見ることが叶わないのなら描いてしまえ、と思ったかどうかは知らないけれど。この2点は近藤さんの心の声が描かせた。
本来のセイレーンは海のも山のも女性なのだけど、女性でも男性でもないものとして描いた。半人半獣だって十分異形のものだけど、さらに異形のもの。だからこその神聖さ。近づいたら喰い殺される。近づいてはならぬ。
絵描きの純粋な欲求は結局近藤美和の制作のテーマに外れてはいない。むしろテーマそのものだった。