デジタル版画ー横尾忠則の時代

横尾忠則という作家は好奇心の塊みたいな人だと思います。

プリズムでの2回目の個展はデジタル版画の展覧会でした。
2002年のことです。今から約20年前、デジタルも版画として流通し始めたころのことです。当時新しい技法だったデジタルでの制作にわくわくなさっていたに違いありません。

デジタル版画、ジークレーとも言いますが、単に手描きの作品をスキャニングして版画としている場合もあります。しかし横尾さんのこの作品は本当の意味でのデジタル版画です。写真や手描きした部品をコンピューターに取り込んでそこから作品として構成していくという手法です。だから手描きの元絵というもはありません。つまりコンピューター上で制作をしているのです。

普通版画にはエディションナンバーというものがあります。〇/△、△枚刷ったうちの〇番目です。という意味ですがこのシリーズには通し番号しかありません。
すでに大家となっていた横尾さんの作品は安くは手に入らなくなっていました。多くの人に持っていただきたいということから、欲しい人がいれば何枚でもプリントします。という理由から通し番号になっているのです。だから価格もずっと上げないと決まっているのです。

ただしオファーがあればその都度プリントするのですが、色調に関しては毎回ご自分で監修し、時にはかわることもあるということです。

事実、この展覧会はニューヨーク、ロサンゼルス、東京、名古屋と開催されたのですが「最後の名古屋でやっと赤が納得のいく色になった」とおっしゃっていました。日々刻々心は変化します。今はまたきっと違う赤が横尾さんの心にあるのだと思います。

20年前の一番をぜひ見てください。

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