スタイリングドキュメントー石川真海きものクリエイション3

土曜日の夕方のことでした。この展覧会は土日曜日午後5時までの営業でそれ以降別のイベントが入っていました。声楽家のすずきさあさんが来廊してくださいました。

「明日日曜日午前中のイベントにぴんぽんまむスタイリングで歌いたいのですが相談にのってください」とおっしゃるのです。

どうなることかと固唾をのんで事の成り行きをその場にいらっしゃるみんなで見守っていました。

さちあさんと石川真海さんはこの時初対面。

石川さんさっと3点ほど着物を出してきて「このあたりでお好きなのはどれですか」と。さちあさん少し迷ってはいましたが1点を選びました。それはアンティーク着物なので長さは足りません。どうするのかな?

「明日白のフリルのついたブラウスに黒のタイツとハイヒールで来てくださいね」と最後に打ち合わせをしてさちあさんにはお帰りいただきました。

さちあさんのキャラクターも知らないので石川さんとしてはきっとドキドキだったはずです。

日曜日朝9時30分ギャラリー。
45分後。
ブラウスを中に着て着物を短めに着つける。帯は矢立て。
何てかっこいいんだろ。

きものスタイリストになる前からずっと洋服のスタイリストとしてスタイリングは百戦錬磨。与えられたお題にはちゃんと応えられるのがプロフェッショナル。

凄いものを見た。これはドキュメントするのがプリズムの使命。

靜和ー石川真海きものクリエイション3

今回の「石川真海きものクリエーション3」でも着物周りの小物を作る作家さんたちにも出品していただいています。

「靜和(じょうわ)」もその一人です。
和装銀小物を制作する作家さんです。
今回は「赤」をテーマにした根付と帯留めを制作してくださいました。

達磨の赤、紅葉の赤、鳥居の赤・・・。
逆さ「福」は中国の目出度い物。
「福」が降ってくるイメージです。中国では赤で書きますね。

それぞれの作家さんの「赤」へのこだわりも見てください。

近藤美和コラボレーション着物ー石川真海きものクリエイション3

前週の近藤美和さんの個展でも紹介しましたが、近藤さんの作品が大好きな石川真海さん、去年の帯に続き今年は着物をプロデュースしました。

黒い無地の着物に近藤作品をシルクスクリーンプリントで染めました。

2年前に近藤作品に出合った石川さん。もうひとめぼれ。
どうしたらコラボレーションできるかといろいろ考えたり調べたりした結果この方法なら着物や帯にできることがわかりました。

新作は2点。
お客様の体形に合わせてお創りします。ベースの着物は中古ですので基本的には40,000円。昨年発表した帯も参考作品として会場に置いています。そちらも見てください。

*この展覧会は土日曜日は午後5時までの営業です。

 

チャレンジー石川真海きものクリエイション3

舞妓さんや芸妓さんの衣装や舞台衣装は一般の着付けとはまた違っています。
きものスタイリスト石川真海さんは昨年よりそちらの勉強も始めました。

着物の着付けは奥が深い。
その奥を知ることでスタイリングの幅はまだまだ広がる。
還暦を過ぎてギアを入れ替えるにはそういうチャレンジの心は必要です。

だからこれは気合の舞妓スタイルなんです。
着物はお引きずり。裾には綿が入っています。
帯はだらりの帯。
だいぶ年季の入った衣装です。
着物も帯もきれいに垂れ下がるようにという工夫なのかとても重い。
これをしっかり着つけるには相当な力も必要でしょう。

ジムで筋力も鍛えているとか。
チャレンジとはそういうことなんですね。

*今回舞妓衣装は「北徳」さんのご厚意によりお借りしました。

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近藤美和個展ー最終日

「近藤美和個展」は本日最終日です。(午後5時まで)
これからもどんどん進化を続ける近藤美和さんをずっとずっと見ていてください。

次回は近藤さん自身が纏っていらっしゃる着物、そして彼女のスタイリングをプロデュースしたきものスタイリストぴんぽんまむ石川真海さんの個展です。
近藤さんがお召しの着物は右上に飾られている近藤作品からシルクスクリーンプリントで制作したものです。近藤美和さんとのコラボレーション作品も数点出品される予定です。近藤美和ファンの皆さんも是非お出かけください。

「ぴんぽんまむ石川真海展」は11月9日(木)-19日(日)*火曜休廊です。

慈しみ深き薔薇ー近藤美和個展

黒の下地に白い絵の具だけで描く。なんとも潔い。
ある意味良いも悪いもごまかしが効かない分作家本人にとって勇気のいる描き方なのではないだろうか。

それでも今回モノクロにこだわった近藤美和さんの気持ちの強さを称えたいと思う。

これからどう変わっていくのか、きっとずっとここに居はしないだろうと思うと彼女の「今」をしっかり見ておかないととあと2日しかない個展の残り時間に焦る。

永遠の花ー近藤美和個展

修道女が自分の信仰を深めるために持つ絵を信心画というのだそうです。これはその形を模した作品です。キリスト教的モチーフではありますが、日本でもお厨子があったように信仰の拠り所として自然に生まれたものなのかもしれません。

この個展では「自灯明」というタイトルの絵はありませんでしたが、前回もその前もそれをテーマにした作品がありました。これは釈迦が説いた言葉で「自分を信じて生きる」ということです。自分を信じるとは自分は信じる道をちゃんと生きているのか厳しい目で自分を見つめることでもあります。修道女が信仰の拠り所を持つというのはとても近いものを感じます。

幼少期にドイツで過ごした近藤美和さんにとってはキリスト教的モチーフのほうがしっくりいくのかもしれません。決してキリスト教を信仰しているのではないですが、各宗教を越えた普遍的な信仰については深い思いがあるのです。

モノクロの表現が今回の個展では中心になりますが、モノクロの先に出てきたのこの色使いです。

この絵は黒の下地にオークル(黄土色)のモノトーンで描き進め、エメラルドグリーンを入れ、赤と白を刺して完成させました。

オークルもエメラルドグリーンもモノクロの絵を描く前によく近藤美和さんの絵に登場していた色です。

モノクロになる前の近藤さんの絵が色に溢れていたという印象はありませんが、それでもモノクロ作品は下地の黒と絵具の白しか使わないのだからそれ以外の色はすべて排除したということになります。モノクロで数年制作したことで色に対する整理をしていたのかもしれません。

モノクロを経てまた近藤作品に必要な色を考えた際に再び登場したオークルとエメラルドグリーン。それは近藤さんにとってどれほど必要な色かと思います。

すでに駆け出しと言われる時期は過ぎベテランの域に入ろうとしている近藤美和と言う作家はこれをこう描けばファンは喜んでくれるという経験値はあるはずだけど、それに溺れてはいない。何よりも自分がわくわくしていられるために何が必要でどうしていったらいいのか厳しい目で制作をチェックしているように見えます。

オークルとエメラルドグリーンに何がプラスされていくのか。あるいはこの2色は姿を消すのか。

色だけ見ていても彼女の未来はとても興味深い。

海と山のセイレーンー近藤美和個展

近藤美和さんは海と山のセイレーンを描きました。
水の中のセイレーンは良く知られた存在ですが、山のセイレーンもあります。

海のセイレーンは人魚で山のセイレーンは上半身が人間で下半身は鳥です。
もともとセイレーンは山のセイレーンが主流だったそうですが、今では水の中のセイレーンがよく知られる存在です。
美しい声で歌うセイレーンに人は惹きつけられ近づくと喰われてしまうと言われています。

なぜセイレーン?
「人と動物が合わさった形が造形的に面白いと思い描いてみたくなったのです」と。伝えたかったテーマ以上に「描いてみたい」という画家の欲求は純粋で興味深い。理屈ではなく描きたいという気持ち。

半人半獣。
見てみたい。見ることが叶わないのなら描いてしまえ、と思ったかどうかは知らないけれど。この2点は近藤さんの心の声が描かせた。

本来のセイレーンは海のも山のも女性なのだけど、女性でも男性でもないものとして描いた。半人半獣だって十分異形のものだけど、さらに異形のもの。だからこその神聖さ。近づいたら喰い殺される。近づいてはならぬ。

絵描きの純粋な欲求は結局近藤美和の制作のテーマに外れてはいない。むしろテーマそのものだった。

雨の音ー近藤美和個展

絵には少し毒がある方が魅力的。
近藤美和さんの絵には時に毒を見る。

この絵もカタツムリのぬめりを感じる。
ぬめりを排除して丸っこい可愛い部分だけを抽出したようなデフォルメーションもイラストレーターとしては可能なのだろうけれど、近藤さんはあえてぬめりを感じるデフォルメーションにしている。

ぬめりをどちらかといえば気持ち悪いと感じる人のほうが多いだろう。もちろん、そこに気持ち悪さなんて感じない人もいるのでこれは絶対的な感性の話ではない。

多くの人が気持ち悪いとか嫌いと感じることが毒なのだが。
その毒があるからこそ目が離せなくなる。毒は実は大きな魅力なのだと思う。そしてその魅力はだれにでも魅力というわけではなく、毒に当てられる人と毒の魅力にはまってしまう人がいる。これが作家にとっても鑑賞者にとっても個性なのだ。苦手と言う人と大好きという人の感性に深い溝があればるほど作品としての個性が際立つのかもしれない。

カタツムリに蔦の蔓を絡ませることでぬめりを中和させる、というか品位を高めている。