「スケッチは私にとっては覚え描きです」と鈴木喜家さんはおっしゃいます。
油絵なら現地で描き上げることができますが、日本画はそれができません。
スケッチは必須だと言います。
「覚え描きといってもこんなに描きこむのですね。」とよく言われますが、ご本人にとってはそうでもないようです。スケッチで完成させてしまうと本画(完成画)を描く必要がなくなってしまうのだそうです。
現地でスケッチを描いて画室にもどると、そのスケッチから別のインスピレーションを受けてちょっと違った絵になることもあるそうです。
作家本人にとっては覚え描きのスケッチですが、観る側はまた違った視点で鈴木喜家さんのスケッチを観ます。
「この風景のここを絵にしたい」という思いを一番強く持ったのはこのスケッチを描き始めたとき。その強い思いが絵の中に見える。それが観る側の醍醐味となる。線を描くスピード・強さ・繊細さ。そこに画家のピュアな感動が現れる。
何十年も前に描いたスケッチに過去の自分の感性に感動して本画になることもあるのだろう。スケッチは画家本人にとって大切な宝物でもあるようです。