林檎…宇宙の恋 灯ー花井正子展

たいていの子供は多かれ少なかれ何かしら大人からの理不尽な理由で傷ついている。わかり易い例なら戦禍で逃げまどう子供。これは言語道断な悪いたとえではある。親たちのちょっとした不機嫌だって十分子供は傷つく。

花井正子さんだって例外ではなく、傷ついた過去がある。
子供の頃の事なんてさっさと忘れなければいけない。本当にそうだろうか。
傷つくという感情を知っているから他人の痛みを想像でき優しい人間にもなれるのではないかと思う。

傷ついたこと思い出すとふと立ち止まってしまうのだけど、そこから立ち上がって前に進むという術を自分の中に確立することこそ、大事なこと。

絵を描くことで前に進むことができるのは絵描きとして一番正しい生き方なのだと思う。

10年以上前から描き続けている風景画では夜の風景の中に小さな光を描き続けてきた。「こんな暗い絵を描いていると花井さんが死んでしまいそうな気がする」とおっしゃった方がいらっしゃったけど、私はそう思わなかった。光は進むべき目的地。目的地を描く花井正子は生きる道を見失うまいと必死に生き進むように見えたから。

傷ついた子供の心を忘れないでいるのはいつまでも過去に固執しているのではなくて、幼かった彼女を守ろうと林檎を置いて働きに出かけていた母の愛を忘れないためなのではないか。

あの日どんなに寂しくて不安であっても赤い実(林檎)があるウチの中で待っていることが目的地に向かうことだった。

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