「私が描いた人たちの肩に力が入っていないといいなと思っているんです」
「どの人にもそんな力見えないよ」
「それなら嬉しい」
ある日のはまだのりこさんと私の会話です。
シャカリキにならずゆったり生きる人々が描きたいというはまださんです。
そういえば「自分は汗かいて必死になって絵を描いているけどその汗を観る人に感じさせたらだめだなと思っています」とおっしゃる作家さんがいましたが、お二人が目指しているものは同じなんだと思っています。
NHKの「プロフェッショナル」という番組が好きなんですが、そのエンディング曲に「あと一歩前に進もう」という言葉があります。資質の高い人がさらに高みを目指すから「プロフェッショナル」と言われる。はまださんとその作家さんはその境地で絵を描いているから観る人をリラックスさせる絵が描けるのではないでしょうか。
「あと一歩前に進もう」というエピソードがこの個展にはあるのですが、それは公表しないでほしいというはまださんからの要望ですからそれは書きません。でもそれは作家にとって勇気のいる出来事でした。もしかしたらその勇気を使わなくても観客には気が付かれなかったかもしれない。それでもそれをしなかったら彼女自身が自分を許せなかったこと。「プロフェッショナル」の凄味を見せてもらった気がしました。