加藤鉦次さんの絵は不思議だ。
実際の絵と写真に撮った絵と乖離がある。
絵を描く時当然のことながら、心が揺らぐ。
描いてはみたものの、ちょっと違うなと思うことがある。
完全に違うことを消して描き直すこともできるけど、彼はちょっと違って描けてしまったものも自分だったのだから完全に消してしまわずに描き続けるのだそうです。
少し前の自分の残像が絵の中に残る。
写真は色を公平に拾うのだけど、人は目から心を通して観るので拾うところが違う。それが個性なんだと思う。あなたが見るこの絵と私が見るこの絵はきっと違う。
さらに作家である加藤鉦次さんはまた違って見えているのだろう。
「写真に撮った自分の絵は深みがない」と加藤さんは言う。
もっと迷ったり悩んだりしたところが映らないのだそうだ。
実際に見る絵はある意味少し難解で、すぐに見えてこない。だからこそ絵と対話ができる。これこそ絵を観る醍醐味なんだと思う。