白の理由ー花井正子展

「なぜ白?」と尋ねると「虚無を描いているのだから色に意味はない」と花井正子は嘯く・・・。

彼女は「私のテーマは明るい虚無や」と関西弁で言う。
そのたびに私は彼女の言葉に欺かれているような気がして落ち着かない。

絵を描くことは至福の刻を過ごすことと言う花井にとって、彼女の手から紡ぎだされる絵が「虚無」であるわけはない。絵を描くことだけが彼女の「Shanguri-la」に行き着く手段のはずだから。

あ!
この世に存在しない「Shanguri-la」は行き着けたなら「虚無」なのだろうか。
そんな、はずは、ない、と、思いたい。

花井の描く色は「白」も「青」も「赤」も一色なのに、たくさんの何かが見える。言葉にすることはできないけれど、時にはうるさいほど雄弁だ。だからだろうか、私は「虚無」に辿り着けず、絵の前で幸せな途方に暮れる。

 

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