
この個展では一番大きな作品です。
不思議な場面なので「これどういうシチュエーション?」と聞かれることも多い。
ある日小山恵さんは大雨にあいます。線状降水帯とニュースなどで流れるあれです。幹線道路だったので大渋滞にまきこまれたのですが、怖いことに大きな川2本と海が近いところでした。三方から水がひたひたと迫ってきました。このままでは車もろとも水没してしまうというとき、その道路沿いに銭湯がありました。少し高いところに駐車場があったのでそちらに避難したのです。
そこにいればまだ水が迫ってきても銭湯の屋根に登ればいいと判断できるほど危険回避に確信が持てました。すると急にその状況が冷静に見えてきました。
観察したその状況を絵にしてみよう。
実際にはかなり差し迫った状況。水が迫ってくる怖さを実際に見えていたものはもちろん絵の中に描きこんだ。そこに怖さの象徴として9代目玉屋庄兵衛さんの「骨からくり」を入れました。木で作られているとはいえ骨だけで表現している現代からくりです。手に持つ弓は本来舟の舳先にある的を射ることができるそうですがそこは恵さんの創作が入っています。(骨からくりを絵にすることは庄兵衛さんの許可を得ています)
からくり人形を恐怖の象徴として入れるのは効果的です。
からくり人形が恵さんの感情を表現するものとして登場するのは今回はこの1点だけですがこれが最初で最後とはならないだろうと思います。からくり人形を描き始めてすでに10年近くになるそうですが、どんどんその見方が深くなっているようです。まだまだ見えてないことがあるに違いないとおっしゃいます。
からくり人形と恵さんの二人三脚はある意味始まったばかりなのかもしれません。