加藤鉦次油彩展ー春・藤

加藤鉦次さんの絵はやっぱりどなたかがおっしゃったように現代の「印象派」なのだと思う。

「印象派」は光の変化と時間を捉えて絵にすることが特徴なのですが、これは完成されているものでもない。完成することはないのだろう。
だから「印象派」は古くも新しくもない。永遠に道半ばということになる。

それでも光と影と時間を追い求めるその画家の心が切なく、観客の心を離さないのだと思う。

この個展作品の制作を通して「影」の表現に納得がいくようになったそうです。
「影」が描ければ「光」も深い表現になる。

すでに古稀も過ぎ画家としてはベテランと言われる加藤鉦次さんですが、進化が止まらない。進化していくということは苦しいこともたくさんあると思うけれど、それすら楽しんでいるように見える。

加藤鉦次油彩展ー夏ひまわり

 

立ち枯れたひまわりー晩夏。

旧盆も過ぎようとしている頃、北の地ではひまわりも盛りがすぎ稲も実りの時期を迎える。

自然は淡々と移ろっていくけれど・・・。
人の時間も案外概ね淡々と過ぎていくのかもしれない。

淡々と過ぎてゆくときは、大きな収穫を残してくれる。
人だって自然ほどでは無いにしても何かしら残している、と信じたい。

立ち枯れたひまわりに過ぎて来た自分の時間を観るようで、見過ごしにはできない。

加藤鉦次油彩展ー夏ぶどうの家

葡萄が実る頃、葡萄の葉はもう既に当然新芽ではない。

加藤さんはその2つのみずみずしさを一緒に観たくてこの絵を描きました。

夏の光が葉っぱで乱反射して眩しい。
葡萄の蔓は観ている間に伸びていくかのような生命力を感じる。

緑・青・黄色・オレンジ
どれも生きる力に溢れている。

花の絵とは少し違った趣はあるけれど、視点の揺れは見える。

加藤さんの描きたい何かが少しずつ見えてくる。

 

加藤鉦次油彩展ー冬野けいとう

野けいとうは春から夏の花です。
ただ強い花なので冬の初めまで咲くこともあるのです。

初冬のある日散歩していると野鶏頭の花が風に翻弄されていた。
鮮やかな色が横に靡く様に心奪われたそうです。

暖色が乏しい季節にはっとさせられた瞬間。

人にとっての瞬間は一瞬ではないことも事実です。
瞬間と瞬間の重なり合いがリアリティ。

 

加藤鉦次油彩展ー秋・小菊

多くの植物にとって秋は去り行く季節。
その季節を惜しむように小菊が咲き乱れる。
その周りでは多くの野の草はすでに立ち枯れようとしている。

画面左の花は小菊では、ない。
ヒメジオンだという。

「主役は小菊なんだけど・・・」

ヒメジオンにふと心が奪われたとして、それを集中力の途切れだとだれが非難できるだろうか。

視点が動いただけ。それは人の本質でもあるのかもしれない。

加藤鉦次油彩展ー夏・芙蓉

芙蓉の大株の向こうに実りつつある田んぼ。

夏の強い陽射しも田んぼの稲が吸収して優しい風として帰してくれる。

見渡してみると田んぼの向こうには小山がある。穏やかな里山の景色。

花を見たり、空を見たり、地面を見たり、後ろを見たり・・・。
その都度動く視点を1枚の絵にする。

「印象派の絵を観ているよう」と誰かが言った。

芙蓉の大株の横にあるのはグラジオラスだろうか。

加藤鉦次油彩展ー春ひなげし

人はある場面を見ている時、対象物に焦点が合っている時間は長いと思いますがその後ろの風景に焦点が合う時間もあるし横に焦点が合っているときもあります。焦点が動いていることに意識することはあまり無いかもしれませんが、実は動かないではいられない。

加藤さんの絵にはそういう眼差しの移ろいが描かれている。

絵の前に立って左右に動いたり、近づいたり離れたりしてみると、奥行きがはっきりしたり、ある部分がくっきり見えたり、後ろの遠くの風景が見えて来たり・・・。

写真にするとすべてが一目でわかるのが、なんだかつまらない。

加藤鉦次油彩展ー夏ジャルダン

初めに断っておきますが、この作品は写真には面白さが写りません。

とても不思議な絵なんです。
絵の前に立って、しばらく行ったり来たり、離れたり近づいたりしてみるとクリアに見える場所に出会う。ちょうど写真に写っているように見える。
この写真は正解を見せてしまっているようなものなんです。

始めてみた時、この絵は逃げると思いました。
ちょっと立ち位置が変わるとすぐに焦点が合わなくなるから。

実はこの絵だけではありません。どの絵も・・・。
そして、今回だけではありません。もうずっと加藤さんの絵はこういう表現です。揺れる絵。

不思議体験を是非ギャラリーでしてみてください。

*加藤さんは毎日在廊しています。

Win the Virusー最終日

COVID-19
それはすべての人に平等に襲って来た恐怖でした。今もなお全容はわからない。
たった2、3ヶ月の間に起こったことがもう随分前のことのように思います。
気持ちはパニック映画に放り込まれたような毎日でした。

それでも緊急事態宣言は解除され徐々に日常の落ち着きを取り戻しつつあります。

「Win the Virus」展も本日最終日となります。

休業を要請され、実店舗営業ができなくなりましたが、ただただ休業することに納得がいかずアナログネットギャラリーとして営業を続けたこと。最初はこれで良いのかどうか自信もなかった。
それでも今ではやって良かった。やりきったなという爽快感の中にいます。

ファッションデザイナーの安達真由子さんが「今私はブラウスやスカートを作っている場合じゃないと思うんです。足りなくて困っているマスクを、それもこんな時だからこそオシャレなマスクを作ってみなさんに見てもらいたい。」というメッセージをいただき、その気持ちをベースにこの展覧会を立ち上げたことは奇跡に近かった。

思いのほかたくさんの反響があり、たくさんの方々に支えられ助けていただいたことに、感謝しかありません。

既に始まっているであろうコロナ恐慌の大きさは想像もできず、それを思うとまた足がすくむ思いです。しかし、多くの方の応援を糧にもう少し頑張ってみようと思います。

本当にありがとうございました。

6月4日(木)からは加藤鉦次油彩展が始まります。
いつもの個展ではギャラリートークが開催されますが、まだそれは再開できないことなど通常といってももう少し様子を見ての通常です。
これからもよろしくお願い申し上げます。