陶ビーズのネックレス(シピ)ー平田佳子博覧展

このネックレスのパーツはすべて1粒1粒平田佳子さんの手によって作られています。

1粒1粒粘土を丸めて1粒1粒糸を通す穴を開ける。
書いてしまえばそれだけの工程です。
粘土を丸めるのはそれほど大変ではないと言います。実は穴を開けるのは気が遠くなるような手作業なのでした。柔らかい粘土に針状のモノで穴を開ければ針が通った先に押し出された粘土が残ります。それを取り除くとまた少し穴がふさがる。反対から針を通すと先ほどではないにしても、やっぱり粘土が残る。また反対から針をお通す。そんな作業を数回繰り返してやっとビーズ状になる。それを1本のネックレスを作るために何個繰り返せばいいのでしょうか。

雑貨屋さんなどで安価な陶ビーズネックレスを売っていることがありますが、きっと量産できるのでしょう。こんなにきれいなビーズではありません。

平田さんの制作で驚くのはこれに類する根気強い手作業。
そして、その手作業こそが平田作品の真髄。

ざっくり見える作品たちですが、この繊細さがなければできないのです。
作品に汗の跡が見えたらかっこ悪いとある作家が言っていて感動したことがありますが、平田作品はまさに汗の後を見せないクールさが隠し味になっています。

保温ボトルー平田佳子博覧展

寒い日も暑い日も保温ボトルはお出かけにとても重宝します。

平田さんも保温ボトル愛用者です。
せっかくならボトルのボディにも絵付けで描く絵と同じシリーズを描いてしまおうと、描いてみました。それでは「陶パーツ」が付けられない。ボトルにはケースがあったほうがいいしそこになら「陶パーツ」がつけられる。そんなわけでケース付き保温ボトルができあがりました。
(もちろんケースとボトルの絵は同じです。そういう訳でボトルとケースをあっちこっち入れ替えすることはお許しくださいね。)

これが大人気。

平田さんの中ではせっかくなら高い値段をお支払いいただくのは申し訳ないとの思いから、セールを探し何度も足を運んだり遠くまで出向いたり、お値段を抑える努力も惜しみません。

平田さんの絵にほっこりし、その努力を思うと、ボトルに詰めたドリンクがさらにおいしくなります。

最初に「お出かけに」と書きましたが、平田さんは仕事にかかるときにドリンクをボトルに用意し、お仕事しながら水分補給をするそうです。だからデイリーユースだとおっしゃっていました。

丹下幸恵ー平田佳子博覧展

丹下幸恵さんも「おおざる工房」初期からのメンバーです。

丹下さんも坪井さん同様なかなか大胆な作風です。
平田さんは大胆好き?!?

明るく楽しい食器たちはティータイム用にいかが?

新作ロングマフラーー平田佳子博覧展

フェルトでの作品は今までもたくさんつくってきましたが、今まで使ってきたメリノウールは直接肌に触るとチクチクすることがあります。それで首にフェルトが触れる仕様にできませんでした。

それで肌に優しいアルパカでマフラー作りに挑戦しました。
これはなかなか手ごわい。メリノウールほどまとまってくれないのだそうです。
苦心のすえ出来上がったマフラーは肌触り抜群。使うほどに柔らかさが増すそうです。

犬・猫・うさぎがいます。

首に巻くと動物の顔が下を向くことになるのですが、広げたときに動物の体と同じにしたかったのと、何よりも下を向くほうが平田さんは可愛いと思うからこのような作りにしたのだそうです。

今日お買い上げくださったお客様は長さがあるので帯揚げにしてみようと思ったとか。作家の工夫をさらに使い手が工夫をする。いいですね。

動物の目の部分はもちろん平田さん手作りの「陶」です。

坪井香保里ー平田佳子博覧展

坪井香保里さんは「おおざる工房」の初期からのメンバーです。

平田佳子さんは坪井さんの絵が大好き。
彼女の奔放な絵を自分の器に描いてほしくてメンバーになってもらったそうです。

例えば絵付けをする絵具を均一に塗らないとむらができます。これは陶芸家としては技術が低いとみなされますがそんなことを気にしていては奔放な絵は描けません。平田さんはこれを良しとしています。のびのびとした絵のほうがずっとずっと魅力的だと思うから坪井さんとのコンビが長く続いているのです。

これは陶芸の世界では異端に近いのかもしれません。プリズムはそれだからこそ面白いし多くの方々に紹介したい。

追々ほかのメンバーも紹介していきます。

シピー平田佳子博覧展

「シピ」は平田さんの作品の中でアクセサリーのブランド名です。

もともとこちらも「おおざる工房」として制作していましたが、このキレイ系の作品に「おおざる」はちょっとイメージに合わないのでブランド名を別バージョンにしたのです。

こちらのアクセサリーは平田佳子さんとお姉さまの平田小猫さんと二人で制作しています。「陶」と「フェルト」のパーツを佳子さんが制作し小猫さんがファブリックを入れて仕上げるという工程です。

「シピ」はフランス語でわがままな猫という意味だそうですが、猫好きなわがまま姉妹が作っているのでそれをブランド名にしたそうです。

丁寧な仕立てには定評があります。

雑貨を作るー平田佳子博覧展

「雑貨を作るのは楽しい。それは趣味。」と平田佳子さんは言い切ります。

実はこの言葉の中に深い意味があります。
陶芸家としてプロの仕事をするには厳しいこともあります。楽しい雑貨作りをしていると陶芸がどんどん疎かになりそう。だからこれらの雑貨には必ず「陶」でできたパーツを入れています。自分は陶芸家なのだという自戒の念を込めてのことだそうです。

楽しく作った雑貨はその楽しさが溢れているのでファンも多い。
当然売れ行きも良く私も何度か値上げの提案をしました。そのたびに「雑貨は趣味だから材料費分しかいただかないことにしています。たとえ売れてもそれは自分の中でのきまりにしています。」とおっしゃるのです。ただしパーツに使った「陶」の部分は値上げできるのならするのだそうです。

楽しく作るからこそ、いくつ作るとか、クオリティを上げなければ、といった厳しい課題は作らないでいます。作りたいものを作りたいだけ作る。だからこそこんなに楽しいものができるんですね。

おおざる工房ー平田佳子博覧展

自分の絵付けがとても気に入っているという状態ではない中平田佳子さんはたくさんの作家仲間ができました。いろいろなものを制作している仲間には絵を描いている人もいました。

こんな絵が自分の陶器に描けていたらいいなという思いから、数人に絵付けを頼んでみました。なかなかいい出来です。自分の絵で感じていた物足りなさが解決できるような気がしました。

今回のおおざる工房のメンバーは、丹下幸恵・溝渕美穂・坪井香保里・渡辺沙恵子・サノエミコ・平田小猫の6人です。メンバーは時々入れ替わります。それぞれの事情に合わせてのメンバーです。平田さんは決して無理をしません。仕事や体調・家庭の事情などできるときにできる人に描いてもらっています。ただし、自分の陶器に合うということについては自分の感性に厳しく問いかけているはずです。

このシステムにして自分は絵を描かないのかというとそうではありません。もともと絵を描くのが大好きなので、描きます。今回もいっぱいいっぱい描いてくれました。本当は「平田さんの絵が大好き」というファンだって少なくはないのです。きっと自分に厳しいだけですよね。

平田佳子の器ー平田佳子博覧展

まずは平田佳子さんが全工程手がけた作品の一部を紹介します。

絵付けがそんなに得意ではないと言うけれど、平田さんの絵のはたくさんのファンが付いています。これを見る限り思い過ごしではないかとも・・・。

それは置いといて、確かに全工程セルフでやるという常識ではありますが、そうでなければいけないのでしょうか。工房などで分業ということはあっても陶芸家と名乗る場合ほとんどセルフということに疑問を持ってもいい。

平田さんの「おおざる工房」はいわゆる「工房」ではありません。ほとんど作家名に近いものです。平田さんが親方的存在で集団を引っ張っているというのとは違います。平田さんが「この作家にはこんな形の器に描いてもらったらその作家の絵が活きるな。」と企画を立てたものを作家と相談しながら仕上げていくという方法です。器そのものは全部平田さんが作ります。

今日はまず、絵も含めて混じりけなしの平田佳子だけの作品の写真を掲載しました。

続きは少しずつ書いていきます。最終日に「平田佳子さんの作品像」が見えてきてくれたらいいなと思っています。

平田佳子博覧展ーおおざる工房+シピ=陶芸家平田佳子

あけましておめでとうございます。

2023年プリズムの第一弾は「平田佳子博覧展」です。
「おおざる工房と仲間たち」を2回開催し、おおざる工房を一人で企画している「平田佳子」という作家から目を離せなくなりました。

プリズム30数年の歴史の中でこんなにユニークな作家がいただろうか。

平田佳子さんは「おおざる工房」という名前で陶芸家として活動しています。陶芸家のほとんどの作家が形を作るのも絵付けをするのも全部1人で完結です。平田さんは絵付けももちろんできるのですが「私の絵より私の好きな作家の絵を描いていただいたほうが素敵になると思うの」とおっしゃいます。

平田さんは雑貨作りがお好きです。ファンもたくさんいて展覧会に出品すれば皆さんの手元に渡っていきます。「少しお値段上げましょう」と提案すると「これでお金になったら陶芸が疎かになりそうだから、しません。」とおっしゃるのです。陶芸家が作る雑貨には必ず「陶」のパーツを入れることも課しています。

どこか一本筋を通す平田佳子の制作姿勢には感心します。

そんな平田佳子さんの作品を一堂に見ていただきたくて今回の個展を企画しました。

平田さんは会期中土日曜日と祝日は在廊予定ですが、名古屋在住ではないので天候と体調によっては在廊できない日もありますことをご了承ください。