「平塚啓Paper Art」は本日最終日です。(午後5時まで)
超絶技巧の向こうに平塚啓さんの深い思いが見える個展でした。
次回は洋画家小山恵さんの個展「小山恵展ー存在のありかの行方」を4月3日(木)-13日(日)*火曜休廊です。正午―午後7時(最終日は午後5時まで)
4月5日(土)午後3時よりアーティストトークも開催します。是非お出かけください。(個展会場にて、予約不要・入場無料)
WHITE MATES bldg.1F 1-14-23Izumi Higashi-ku Nagoya Japan Phone052-953-1839
「平塚啓Paper Art」は本日最終日です。(午後5時まで)
超絶技巧の向こうに平塚啓さんの深い思いが見える個展でした。
次回は洋画家小山恵さんの個展「小山恵展ー存在のありかの行方」を4月3日(木)-13日(日)*火曜休廊です。正午―午後7時(最終日は午後5時まで)
4月5日(土)午後3時よりアーティストトークも開催します。是非お出かけください。(個展会場にて、予約不要・入場無料)
平塚啓さんの「九相図」は仏教画の「九相図」の形はなぞっていますが意味するものは違います。本来修行増の煩悩を払ったり無常観や不浄観を示してはいないことは以前も書きました。生き物が生命を終えたとき土に還ると言います。動物も植物も汚く変化して芥(あくた=ごみ)になるのではなく、芥は土になる。その土は養分豊富な土になりそこに生えついた植物を豊かに育てる。そこに実るものはそこに集まる小さな動物を養う。小さな動物を少し大きな動物が食べ養う。その動物を・・・。弱肉強食はあれども、それが大きな意味での地球の繁栄。と平塚啓さんは考えた。
初めての個展で制作した大きな木の1枚の葉っぱは枯れて土になった。
今回は向日葵の花・椿の花・銀杏の葉・桜の葉が土に還っていく様を切り出しました。
土に還ったその先に豊かな大地が生まれ、植物も動物も豊かに繁栄する。それがこの世に生きとし生けるものの未来への希望であり幸せなのではないだろうか。
「九相図」シリーズと「動物」シリーズは全然別の世界ではない。平塚啓さんの中で点だったものは実はちゃんとつながっていた。そこには必然的に線が存在する。
作家の中には作りたい描きたいものの点がいっぱい存在する。最初は唐突に心に浮かんでくる点はいつか線になり面になって制作の必然へと確信していくものなのかもしれないと、この展覧会を毎日見ていく中で考えました。
明日3月30日「九相図 向日葵」は最終日を迎えます。これからも平塚啓の作品の肝がどんどん養われていくことが楽しみだと思える幸せな最終日になりそうです。
もうとにかく動物がいっぱいの会場です。
平塚啓さん、本当に動物が好きなんですね。
取材をして資料を調べて、制作で実際に手を動かして・・・。
何がここまで平塚さんの心を掴んでいるのでしょうか。
好きなものは好き、としか言えない。理屈ではない「好き」
花が好き、山が好き、猫が好き、・・・
「好き」は人を豊かにしてくれる。
ギャラリー内には鳥が飛んでいます。
もちろ平塚啓さんが切った作品ですが、本当に飛んでいるみたいで迫力があります。
「紙ですよね?破れないんですか?」
だれもが聞きます。エアコンの風に乗ってずっと飛ぶように揺れていますが破れたりちぎれたりはしません。紙が丈夫なのと切り終えた後墨汁で黒く着色するので成分である膠でさらに紙が強くなるのは考えられることです。
それにしてもオナガフクロウが飛ぶ様子のリアリティを作品に落とし込んでいくのは平塚さんのデッサン力の凄さでもあります。実際に作品を前にしてみると平面なのに立体感が半端ない。鳥のように天井からつるすと重力で羽根がしなるのでより立体的になるのは事実ですが、それも計算の上での制作なのだろう。
オナガフクロウは餌の鼠を足につかんで飛んでいる。あまりのリアリティにちょっとぎょっとします。
平塚啓さん本人が動物シリーズで一番気に入っているのが「ハシビロコウ」
掛川花鳥園で大人気のあのふたばちゃんです。
実際に花鳥園に取材に行って観察したり撮影したりしました。
動かない鳥として有名なハシビロコウですが平塚さんの前で飛んでくれたそうです。飛びそうな気配だったので飛んでいるところを動画に収めることもできました。飛んでいる姿を作品にしても飛ばないことで知られているのに「ハシビロコウ」だと気づかれないのも寂しいので正面からの顔を切りました。
好きな動物はたくさんいるけれど実際に目にできないことも多い中「ハシビロコウ」は会うことができた特別な動物です。
平塚啓さんは動物好きです。
推しの動物を切っている時間はきっと至福の時。
そういうわけで動物の切り絵が物量としては今回とても多い。
「九相図」で煮詰まったときとか向日葵が枯れて崩れていく様子をじっくり観察しているときなど、動物の切り絵で心をほぐしていたのだそうです。
動物シリーズだって多くのお客様は「なんて細かいの!」「こんなことができるのが信じられない」など心底驚いていらっしゃいますが、当の平塚さんにとっては楽しい時間だったんですね。
動物園で写真を撮ったりもされたそうですが、なかなか良い場面に遭遇できず色々な動画の中のいい表情(平塚好み)をピックアップしたり。それはそれで苦労はあったようです。愛くるしいだけが平塚好みではないのがまた魅力です。
「九相図」シリーズにはないリラックスした状態での制作も根を詰めてばかりではなく心と体のバランスを取りつつの大切な「動物」シリーズです。
平塚啓さんの今回の個展のメインは「九相図」。その中でも最も力も時間も注いだのが「九相図向日葵」。「九相図向日葵」は大作でもありますが1点。「九相図」も物量としては全体の5分の1くらいだろうか。
今日の写真に「向日葵」以外の「九相図」のほとんどがあります。
メインテーマにしては少々物量は少ない。ただこの「九相図」シリーズには「向日葵」だけで510日という膨大な時間がかかっている。しかもこのテーマは仏教の死生観を含めて無常・不浄など重くて深い思想を考えながらの制作になりますから、精神的にきつい時間にもなります。
「白椿」「欅の葉」「銀杏の葉」「トウカエデの葉」が「向日葵」以外の九相図です。
今回の九相図はいったんここで終わりにして、明日からは他のシリーズを紹介します。九相図のシリーズがこれからも続くのかどうかは今の段階ではわかりません。5点の「九相図」。物量だけでは測れない作家の思いの深さがあることだけはお伝えしたいと思います。
510日という気の遠くなりそうな時間の先に出来上がった「向日葵」
膨大な時間は向日葵の九相のリアリティの追究に費やされそれを具現化するために費やされた。
左の画像は九相の5番目。右の画像はこの向日葵を作るための部品。
種・花びら・種の部屋・ガク
1つ1つの部品・・・と敢えて書きますが、その再現には気の遠くなりそうな工夫が必要でした。工夫の方向が決まり数を揃えるとなると手仕事はまた気が遠くなりそうな時間がかかる。その具体的な説明は文章にしても多分伝わらないのでギャラリーにいらっしゃった方にはご希望とあれば説明させていただきます。
部品を組み立てて花を組み立てる。
と一言で表現できることにもとんでもない技術も時間も必要です。
510日の果てに、平塚啓さんは何を見たのか?
実は終わったなと思っただけで特に何か気持ちに変化があったわけではなかったと言います。そうなのか?本当?だけど、それが真実なのかもしれない。
未来に心の変化があったとしても、それはそれかな。
ともかく510日は見る側に説得力があることは間違いない。
「九相図(くそうず)」耳慣れない言葉です。
これは仏教絵画の1ジャンルです。
死体の変遷を九つに分けて描いたもので、見ることで修行僧の悟りの妨げとなる煩悩を払い現世の肉体を不浄のもの・無常なものと知る修行のための絵画なのだそうです。
煩悩を払うために絶世の美女とされていた小野小町の九相図は何点もあったようです。
ネットで調べてみると何点も観ることができますが、ショッキングな絵でもあるので閲覧注意とあることも多いように思います。案外科学者の目で事実をありのままに描いていたということがわかります。
美しいと言われる女性になぞり平塚啓さんは向日葵の花の九相図を作りました。
植物なので動物のような凄惨さ(あくまで一般的な主観です)がないのも作品制作のモチーフとしては選びやすかったのでしょうか。
何よりも大きな違いは平塚九相図には煩悩の払拭や無常を知ってもらうという目的は無い。
人の体も花も朽ち果てた先に未来を養っていくものがあるのも事実である。
前回の個展では大きな木の作品が会場にありましたが、これは彼のお父様の死に見た次の世代へ受け継がれるものがテーマでした。
九相図を制作する中で平塚さんが得たものは何だったのか知るのが明日以降のプリズムの楽しみです。
そして圧巻にもこの作品510時間という時間を費やしたことも書いておきます。
ペーパーアーティスト平塚啓さんの個展です。
紙をカッターナイフで切り出したり折ったりして制作をするだけでも超絶技巧に観る側を圧倒してきました。しかし本人はそれだけでは飽き足らず着色や紙を丸めることでさらに表現の幅を広げ自身の世界観をも広げています。前回の個展からの進化は留まるところを知りません。
もちろん技術は表現したい何かのためにあり、技術だけを観ていただきたいと思っているわけではありません。そのあたりを含め会期中に皆さんにもっとわかっていただけるよう毎日のブログで解明していこうと思っていますので読んでいただけると幸いです。
また3月21日(金)午後6時よりアーティストトークをギャラリー内で開催いたします。平塚啓さんの語る言葉を通してさらに理解を深めることもおすすめいたします。是非お出かけください。(予約不要・入場無料)
「九相図 向日葵」 平塚啓Paper Art
2025年3月20日(木・祝)-30日(日)*火曜休廊
正午―午後7時(最終日は午後5時まで)
会期中午後1時から5時までは平塚啓さん本人が在廊します。