外皮ー山内寿美展

大好きな服はずっと着続けてしまいます。もう着られないなと思っても捨てがたい。なぜなんだろうと、山内寿美さんは考えた。

長年着た服は自分の皮膚に馴染む。本物の皮膚ではないのに自分の皮膚の延長に思えてくる。そう簡単に捨てられないのは第二の皮膚、自分の身体の延長だからだろうか。実際に自分の細胞のいくつかは着慣れた服に沁みこんでいるはず。

それならそこに進化に必要な(はずの)模造真珠や模造ガラスのビーズを縫い込んでみよう。環境汚染も取り込める生物としての進化。そうなればいい。

希望。

この個展のストーリーはここから始まった。

進化ー山内寿美展

美術を勉強し始めたばかりの学生だったとき、指導教授が「生物は進化するものだから人間だって環境汚染をも取り込んで進化しないとは言い切れない」と言ったことに共感した山内寿美さん。今もそうであってほしいと思い続けています。

そんな話を聞いたころ、世の中は環境汚染問題に揺れていた。
彼女自身も将来に不安を覚えていたのだけど、その言葉の力強さは妙に説得力があり生きる力になったと言います。

前回もそうですが、今回も石油から作り出され土に還らないと言われているプラスチックなどの化学素材で作られているパーツを多用しています。

今回はプラスチックのビーズを縫い込んで制作をしました。
汚染物質を体に入れ込んでいるというイメージです。
模造真珠や模造ガラス。

生命の力はそれほどまでに強靭であってほしい。
取り込んで進化できたとしたら、模造真珠も模造ガラスも美しい存在になるに違いない。

山内寿美展ー内胞

コロナ禍の中自身の心の有様を形にした個展から3年。

山内寿美さん自身がこの個展のために書いたテキスト

ヒトの中身について、制作をしています。
制作のきっかけは、大学生だったころにさかのぼる。
94歳でいまもなお現役の現代美術彫刻家のS氏は当時、総合造形コースの教授であった。
官舎を訪ねたとき、部屋にはトレーニングマシンが所狭しと並んでいて、それらを軽々とこなしながら「今や世の中は人体に有害なものばかり。でもそんなのカラダに取り込んで、人間が進化しちゃえばいいんだよ」。
そんな姿に「やはり時代の最先端を突っ走るアーティストは言うことが違う・・」と感動し、妙にナットクした。当時、環境ホルモンの問題が取りざたされていた時期である。
時代は進み、近年では海洋プラスチック問題、続く「未知のウィルス」に至っては、人体への影響もさることながら、心までもむしばんでいった。(これは実際に体験、何年も疲労感や虚脱感に悩まされた)
人類は、日常生活を営む上で、しかしそれらを完全に排除することは、もはや不可能だと思う。
それならば、いっそ取り込んで内胞し、変容し、進化していくとしたら、その様相はきっと醜悪で、とても美しいだろう、という妄想からはじまったのが今回のシリーズである。
実際、進化を遂げたのかどうかは不明だが、これだけ有害なものにさらされながらも人間は生きながらえ、加齢で衰えていく機能は薬や器具等で補充・補強しながら、なおも生きる。
今回の制作では、古い布や着古した衣服に注目した。
長いこと身につけられたもの、使われたモノは、身体の記憶や感情の痕跡が残存しているように感じる。それらを基布に、表面に現れる球状の集合体は、今そうなっているであろう我々の「内側」を、「外側」にひっくり返した様(さま)である。
それは臓器の一部分であったり、身体を連想させる形であったりする。
制作過程において、隙間なく埋め尽くす行為そのものが、自らの内面に沈殿していた感情と対話し、少しずつ昇華させていく感覚があった。 それは、静かで根気強い「心の掃除」のようでもある。
こうした作品を発表し、観ていただくのははなはだ恐縮ではある。
しかしながら、毒がしばしば薬になるように、誰かの中に微かな振動を生み、何かが芽生える契機となるのであれば、それは制作という営みが持つ根源的な力の証しであると信じたい。
制作を通して自身の考えや感性がより明確になっていったようです。
人類にとって未知の体験となったコロナや鳥インフルエンザが山内寿美さんにもたらしたものは何だったのか。この展覧会を通して皆さんに知っていただけたら嬉しいです。

11月22日(土)午後6時からギャラリー内にてアーティストトークも予定しています。(予約不要・入場無料)ご本人の言葉で作品を語っていただきます。是非お出かけください。
山内寿美展ー内胞
2025年11月20日(木)-30日(日)*11月25日(火)休廊
正午-午後7時(最終日は午後5時まで)
スペースプリズム
〒461-0001名古屋市東区泉1-14-23WHITE MATES1F
052-953-1839

石川真海きものクリエイション5ー最終日

「石川真海きものクリエイション5」は本日(11月16日)最終日です。
きもの文化と広告デザインの融合を楽しんでいただけたことと思います。
来年も11月15日(着物の日)あたりに6回目を予定しています。

次回は11月20日(木)から「山内寿美展ー内胞」です。
脱コロナの時代の山内寿美さんの心を形にしました。
11月22日(土)午後6時からギャラリートーク(予約不要・入場無料)も開催します。是非お出かけください。

今日は着物の日ー石川真海きものクリエイション5

11月15日の今日は「着物の日」です。
今年もこの個展では石川真海さんも私も連日着物で皆様をお待ちしています。

毎年「着物の日」前後に「石川真海きものクリエイション」シリーズを開催しています。今年で5年目になりました。着物文化を楽しんでいただきたいを「きものスタイリスト」の視点で発表を続けています。

今年は広告デザインの文化のすばらしさをきものスタイリストの立場から光を当てたという企画です。それで5人のコマーシャルフォトグラファーに石川スタイリングを撮影していただきました。

広告デザインと日常に着物を着ることとは少し乖離がありますから、2本の柱でこの展覧会は成り立っています。そうはいえ、石川さんは「着物を着るのはコスプレ感覚」ともおっしゃいますので、スクランブルな感じかもしれません。

まあまあ、「着物楽しい!素敵!好き!」と思っていただければいいな。
明日11月16日(日)が最終日です。

ハルコギ(こぎん刺し小物)靜和(和装アクセサリー)ー石川真海きものクリエイション5

石川真海さんの感性に合った着物や帯の数々と一緒に二人の手仕事の作家さんが今回の個展に参加してくださいました。
こぎん刺し作家の「ハルコギ」さんと金工和装アクセサリーの作家「靜和」さん。

個性的なきものファッションの色どりに最適な小物たちです。

手仕事の暖かさとともにきものライフを楽しんでいただけたら嬉しいです。

アサノナカ(フォトグラファー)ー石川真海きものクリエイション5

最後に紹介するフォトグラファーはアサノナカさん。
年齢も若い作家です。まだ美大の4年生。
若い感性でスナップ写真のように撮ってポスター仕立てにして作品にしてくださいました。

着付けは石川真海さんですが、小物の制作もアサノナカさん。
モデルさんもイベントで出会って撮影モデルとして撮って見たくなった女子に自ら声をかけたそうです。二人のうちお一人がヘアメイクを勉強している学生さんだったのでお願いしました。

若い感性を目いっぱい写真に込めてくれました。
雨の日の撮影になったのですが、それでも楽しいに溢れた時間が見えます。

石川さんはこの3人の楽しい時期を存分に引き出せるようなスタイリングをしてくれました。着物(ゆかた)の中から可愛い襟やスカートが見え隠れするのがイマドキです。

アサノナカさん、石川真海さんのお嬢さんです。
これからのクリエイティブな時間をいっぱい楽しんで欲しいですね。

川嶋なぎさ(フォトグラファー)ー石川真海きものクリエイション5

女の子はおしゃれ大好き。小さくたって着物を着るのが特別ってよく知っています。

この撮影はスタジオではなく外でした。
おしゃまな二人もやっぱり外では自然に体が動いてしまします。
そんな子供の持つかわいいエネルギーが写真から伝わってきます。

石川真海さんの着付けが二人のおしゃまさをひきだしています。おしゃまさと元気さを川嶋なぎささんのフォトグラファーとしての視点が逃しません。

かっこいいモデルさんに着ていただいた着物。可愛い子供さんが着てくださった着物。uniquenwnss(個性)

 

 

松井なおみ(フォトグラファー)ー石川真海きものクリエイション5

きものスタイリストの石川真海さんはエスニックが大好き。中でもシノワズリーは特別大好き。ということでこのスタイリング。

エリザベスカラーのような飾りを作り、それを中心にしたヘアメイク。
それを受けての松井なおみさんの写真です。少しレトロなスタイリングなので実際より色をダークにしてくれました。

近頃の写真はデジタルなので色をイメージに合わせていくのはフォトグラファーの腕でもあります。
写真に合わせて額もチョイスしてくださいました。

今日はモデルをしてくださった河村理沙さんも来てくださいましたが、視線を含めて表情を作るのもプロフェッショナルの仕事なんだなと改めて知りました。
ヘアメイクの効果も絶大なんだとわかりました。

 

sakapingpong(フォトグラファー)ー石川真海きものクリエイション5

コマーシャルフォトの世界に経済はとても重要です。
経済が豊かな時代にはこういうかっこいい写真が街に溢れていました。

石川真海さんは豊かな時代にスタイリスト人生をスタートさせました。
経済が豊かな時代真っ只中。たくさんの経験もしたことでしょう。

sakapingpong(フォトグラファー)さんもそういう時代を一緒に潜り抜けた仲間のお一人です。

たくさんの経験はたくさんの技術と感性を身に着けることができます。

昨日紹介させていただいたSHOEIさんもsakapingpongさんもいい時代を経ています。

刺激的な色に溢れ、攻めたメイク。攻めたポーズ。
かっこいい!

経済が停滞気味の現在はこういったかっこいい写真がなかなか見られませんが、こういう写真ってかっこよくない?という石川真海さんの気持ちをsakapingpongさんが形にしてくださいました。