「春の日は地面に生えた雑草とリルケの影が並んで伸びる」
銅版画歌集「空を飛ぶ方法」の最後のページにある版画と短歌です。
初めてプリズムで個展を開いてくださったときから「僕の作品はリルケの詩を形にしたものです」と何度もおっしゃっていました。リルケに深い関心を寄せていた板倉鉱司さんですから、版画も彫刻も短歌もリルケの影響を受けての創作活動です。
リルケの深い思想を誰にでもわかる言葉や形で私たちに伝えてくれる板倉さん。
どんなに素晴らしい発想でも難しい言葉や一瞬で分からない形では多くの人に伝わらない。学生の頃「難しいことを易しい言葉で人に伝えられるように努めなさい」と教わったことがあります。伝えたいことの真髄がわかっていないから難しい表現に頼ってしまうということだとその時理解しました。
わかり易いということは幼稚と言うこととは違います。
物事の深いところを板倉さんのようにわかり易く表現してくれることに本当の優しさを感じます。