今回の御囲章木版画展で一番の大作です。
92×60㎝。
ネットではどの大きさの作品も同じ大きさの写真にしますので大きさの感覚が伝わらないと思いますが、目の前にすると本当に大きい。
この大きい作品を木版画として彫って刷るわけですから、どんな労力をもって制作したのかとそれだけでもぎょっとします。
そしてまたそこにある形がとんでもなく迫力がある。他の作品と同じ大きさの写真にしてもこの上のほうにある花の真ん中あたりから垂れ下がっているような丸っこい物体はすごい生命力で迫ってくる。
前回の個展の時も紹介したのですが、御囲さんは弱視です。しかも垂直の線が見えないという特殊な障害を持っています。
悔しいことに、この大迫力の作品の全容を彼は見ることができません。
こんな大きな作品、少し離れなければ全体像が見えない。それなのに離れてしまったら彼の視力では見えないのです。
見えなくてもこの迫力を作品にしたい。
この切なさ。
彼の特殊事情を多くの人が知る必要はありません。
だけど見る人が観ればその切なさは作品から透けて見えるのです。具体的なことは見えません。見えなくていい。むしろそれが見えてはいけない。
表現したいという切ない気持ちが大きければ大きいほど作品から放たれる生命力は強烈になるのかもしれない。