小山恵さんはある時期何人かの方から「あなたの絵には主役がいない」と言われました。どうしたらいいのか考えたりみなさんのご意見を聞いたりした中で「からくり人形を描いたらどうか」というアドバイスをいただきました。その時はからくり人形についての知識もなく興味もなかったのだけど、見てもいなくていいか悪いかなんて決められないなとからくり人形を見に行きました。
そんな知識での見学だったのでそれほどの期待もなく見に行ったんです。
しかし、それは衝撃の出会いとなったのです。
からくり人形は動く。どんな動きをするかも知らなかった恵さんは、その動きにも魅せられてしまう。毎回寸分の狂いなく動く。人の動きとは少し違うし、人ができない動きでもある。
からくり人形は大陸の空気を纏い時空を超えた存在に見えた。
もうからくり人形から目を離せない自分がいたと言う。
「太鼓を叩くからくり人形」は唐子(中国の髪型服装の子供)
笑っている顔は決して笑いを崩さない。人形だから崩れるわけもなく、心の底から笑っているはずもない。この人形がどんな動きをするのか私は知らないけれど、この人形をモデルに夢中で絵を描いているとたまにコトリと動くことがあるそうです。夜中ならぎょっとする。だからベッドのそばにはこの人形を置かないようにしているんですって。