平塚啓さんの「九相図」は仏教画の「九相図」の形はなぞっていますが意味するものは違います。本来修行増の煩悩を払ったり無常観や不浄観を示してはいないことは以前も書きました。生き物が生命を終えたとき土に還ると言います。動物も植物も汚く変化して芥(あくた=ごみ)になるのではなく、芥は土になる。その土は養分豊富な土になりそこに生えついた植物を豊かに育てる。そこに実るものはそこに集まる小さな動物を養う。小さな動物を少し大きな動物が食べ養う。その動物を・・・。弱肉強食はあれども、それが大きな意味での地球の繁栄。と平塚啓さんは考えた。
初めての個展で制作した大きな木の1枚の葉っぱは枯れて土になった。
今回は向日葵の花・椿の花・銀杏の葉・桜の葉が土に還っていく様を切り出しました。
土に還ったその先に豊かな大地が生まれ、植物も動物も豊かに繁栄する。それがこの世に生きとし生けるものの未来への希望であり幸せなのではないだろうか。
「九相図」シリーズと「動物」シリーズは全然別の世界ではない。平塚啓さんの中で点だったものは実はちゃんとつながっていた。そこには必然的に線が存在する。
作家の中には作りたい描きたいものの点がいっぱい存在する。最初は唐突に心に浮かんでくる点はいつか線になり面になって制作の必然へと確信していくものなのかもしれないと、この展覧会を毎日見ていく中で考えました。
明日3月30日「九相図 向日葵」は最終日を迎えます。これからも平塚啓の作品の肝がどんどん養われていくことが楽しみだと思える幸せな最終日になりそうです。