昨日、今回の高木伸彦さんの作品は技法としては比較的初歩的な方法だということを書きました。
私がギャラリーに関わり始めたころある作家さんの作品が好きだという話をしたことがあります。そうしたら別の作家さんが「ギャラリーに関わるものとしてこんなに初歩的な技法で作られたものを良しとするのはいかがなものか」と意見されたことがありました。その時はキャリア十分な作家さんからの言葉だったのでそういうものかと納得しました。でもそれが心のどこかに引っかかっていたのでしょう。ある時柳宗悦の書籍の中に「超絶技巧だけがいいわけではない」という趣旨のことが書かれていました。民藝の考えなのでクラフトの文脈とは必ずしも一致するとは限らないのですが、それでも心の中の引っ掛かりが少しすっきりしたのを覚えています。
髙木さんが昨日解説したたたら成形しかできないのではもちろんないし、器だってお皿しか作れないわけではない。
今まで見たことのない展示にしたいと思った時、壁だけに展示したいと思い、だったら絵の展覧会のようにテーマを掲げようと考えた。
観たことのないものを観せたい、その気持ちを私は大切にしたい。
そして髙木さんは新人作家。熟練の作家ではない。それでも今までずっとたくさんの展覧会を観て育ててきた目で手を補うべく展示の工夫をしてくださった。そこも堪能していただけると嬉しいです。