御囲章さん、以前の個展のブログでも書きましたが、目に障害があります。
皆さんと同じ見え方ではないのです。生まれたときからのものなので彼自身は今の社会で生きていくための工夫はずっとしてきました。それが彼の中では当たり前になっています。
「目」のことに関して言えば、色の感受性には差があるとはよく言われることではあります。形の見え方についてはあまり聞きませんがそれだってきっと少しずつ違うのではないでしょうか。科学的にどうかは知りませんが、そうであることが不思議ではありません。
「目」だけだって感受性に違いがあるのだから、ものの考え方や物事の受け取り方には違いがあるのは当然の事。
「自分の見え方」
このタイトルを見たとき、御囲さんが作品を作り続ける理由の一部がわかったような気がしました。
「視点」と言う言葉があります。
第一には実際に「物」を見るとき視線を注がれるところと言う意味です。
そこから拡大して「物=物事」までいきます。どこに注目して考えるかということです。
「視点」を全部の人が揃えるなんてことできるわけがありません。
御囲さんはご自分の「目」とずっと付き合ってきた。他人と自分は同じではないようにあの人とこの人も違うかもしれない。ましてや心の感受性がみんな同じなんてことがあるはずもない。そう思って人と人の関係を見ていくと面白い。そんなことを「絵=版画」で伝えたい。それがずっと御囲さんの制作の肝なんです。
蛇足ながら、御囲さんが作った同じ1点の版画。御囲さんとあなたと同じには見えてないんですよ。あなたと私も、御囲さんと私たちほどはではないけれど、同じように見えていないのだと思います。