微妙な距離感ー御囲章木版画展

作家にとって制作上の悩みは尽きない。
テーマについての取り組みは常に自問自答の日々が続くのは当然のこと。
当然と簡単に書いてしまったけれど、これは本当に深く思い問題。最重要案件なんだけど今日はここは置いておくことにします。

その他に画材問題は大きい。
ここ数年御囲さんにとっては版画家の命ともいうべき版木問題がある。
多くの木版画家は「木=木目」の特性を生かしていく人が多い。一方御囲さんの緻密な画面では「木目」が邪魔になることがあり、それを解消すべく現在の版木に移行したのがほぼ2年前。

長年使ってきた版木からの移行は難儀なことでした。
まず「彫る」と言う作業。右手でしていた作業を左手でやるに等しいくらい手が慣れないのだそうです。2年たってもまだしっくりこない。

それだけでなく、「木目」は解消したのだけど彫り残した線にインクを乗せて刷ると線が今までのようにくっきりは出ない。柔らかい画面にしたかったのだからいいように思うが、この線の出方が理想ではない。

今の版木で自分の理想に近づけることができるのかどうか。理想の線が出たとしてそれが画面全体に効果的なのか。線ではない何かでそこをフォローすべきなのか。まだまだ格闘の日々だそうです。苦しくも楽しい時間なのに違いない。

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