10年ほど前の個展のとき「最後に天使が降りてきたんだ」と嬉しそうに話してくれた百瀬博さんを覚えています。
10年のうちに初めは首から下げていた緑のカバンが無くなっている。なぜかなと思っているのですが、もう個展が始まって6日もたちたくさんお話を聞かせていただいていると、どうやら造形的にカバンが要らなくなったということらしい。
今回のブログで何度も書いているようにモチーフそのものには造形的な必要性はあるけれど心情的な示唆は無いというのが百瀬さんの絵なのです。だから緑のカバンに絵のストーリーとしての意味を見つけようとしなくてもいいのだということがやっとわかってきました。
天使もそうです。天使は形としての必要性はあるのだけど10年前のあの日別の形が百瀬さんの心に降りてきたとしたらそれが重要なモチーフになっていたのかもしれません。それ本当?
それでも天使でない別の何かはありえたのだろうか?多分それはない。やっぱり天使でなければいけなかったはずです。天使の向こうにある百瀬さんの心が天使を通してしかストーリーになりえなかったのだから。
なんだか言葉遊びをしているようで申し訳ないのだけど。
悲しいことも嬉しいことも辛いことも絵の中に描きこんで塗り込んで楽しく美しい絵に仕上げることが今の百瀬博さんがしたいことのなです。