月の影ー板倉鉱司鉄の作品展

「この作品1点制作するのにどれくらい時間がかかりましたか」とよく聞かれています。超絶技巧の作品ならそれもわからないわけではないのですが、そういう作品に限らず実は多くの作家さんが聞かれその答え方に困っています。

ことこの板倉作品において実際に鉄板を切って溶接をする時間なら膨大な時間はかかりません。仮に「1時間」としてそう答えたとしたら、え?そんなものかと質問者は思うだろうし、人によってはなんだ簡単なんだと思う人もいないとは言えません。

板倉作品のようにぴっちりまっすぐな線ではないし、パーツも多くないと、それを時間に換算されるのはちょっと違うなと思います。
昨日のブログでも書いたように自分の感性に合わなければ没の山ができることだってあるのだし・・・。

そして何よりもこの形に作ろうと思うまでにどれだけの時間がかかっているのか。

ある作家が「アイデアを考えるのに七転八倒するし、それを形にするのにまた七転八倒するのだけど、それが作品を通して他人に見えたらかっこ悪いよね。」とおっしゃった。
板倉作品はさらっと作っているように見える。七転八倒の後が見えないからかっこいい。だけど思い悩む時間だって、ある。

ピカソはさらさらっと描いた絵に値段をつけたら相手に「これしか時間がかかっていないのに高すぎる」と言われたそうだ。その時「この絵を描くのに自分の年齢分の時間がかかっているんだけど」と返したというエピソードがある。

制作時間にはその作家の人生時間も含まれていることを忘れないようにしたいですね。

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