「空を飛ぶ」がここ数年の板倉鉱司さんのテーマです。
齢70を越えた男性が大真面目に語り始めると少々の戸惑いを感じます。
本人が真摯にその答えを土着の三河弁で語る姿に戸惑いながらもつい引き込まれてしまうことにまた戸惑う。
板倉さんに病気が見つかったのはもう半世紀以上も前、彼が高校生の頃でした。それでも憧れがあって入部した山岳部。初めての登山に行ったときみんなについていけなくて続けることは断念したのだそうです。たった一度の登山だったけどその時行った雲ノ平の霧を忘れなかった。霧は雲だ。その後、体調は気を付けていればそこまで悪くはならなかった。それでも寄る年波は過酷にも彼を苦しめることになりました。いよいよ覚悟をしなければいけないかと思うと辛さもある。そんな時あの雲の上を飛べたらいいな、どうしたら飛べるのだろうと考えたら辛さも随分楽になったそうです。幸いなことに難病指定を受けることができ治療が始まると体調はそれまでとは格段に良くなり今に至ります。
「空を飛ぶ」なんて物理的に不可能なことは当然知っているし、少しぎょっとされることだってわかっている。だけど自分が楽しくいる方法は知っていたほうがいい。それが板倉さんにとっては「空を飛ぶ」なんだ。それを作品にしたというだけのこと。
「鉄の作品展」だけど、今回は雲を木で作った。木彫だ。
「羊雲」の上を飛ぶイメージでインスタレーションとして作品を展示しました。
4月14日(木)-24日(日)*火曜休
正午-午後7時(最終日は午後5時まで)