花井正子さんの作品は遠い日の記憶、それも何十年も思い出さなかったことを突然思い出すといった記憶の呼び覚ましのようだ。
作品についてたくさんの話をしていると、そういったエピソードがたくさん語られる。
溢れ出るがままに描かれた絵は結局記憶のピースであり、ちょっとした短編小説のようだけど、やがて少しずつ繋がって彼女のヒストリーになる。
彼女の絵は私小説ともいえる。それなら何故私小説的な絵ががどうして受け入れられるのか。一人一人の記憶は全然違うものなのに、集約されたそれは普遍になり共有できる記憶になるからだと思う。
あの日あの時の音や匂いや思いが見えたら、もう共有は始まっている。