花井正子さんが使う画材はパステルです。
パステルを紙に指で塗り込みます。
広い面を塗り込む際スポンジや綿棒などを使うのが普通ですが、花井さんはあくまで指に拘ります。
指に伝わる感触も表現上大切だと言います。
だからちょっとしたぼかしやかすれにも彼女にとっては大きな意味があるのです。花井さんの絵が饒舌なのはそういう訳です。
長時間絵を描いていると指の皮膚が破れるときがあります。
破れる前に仕事を終えるようにしているのに、破れてしまう。
血の滲んだ絵はどうしてもボツにせざるを得ないこともあるとか。
厳しくて過酷な制作。
そうしてでも表現したい思い。
描かずにはいられない狂おしい思い。
時に時間差で追いかけてくる、思い。