作品の梱包を解くといつもと違った雰囲気の作品が出てきました。
そこには千波さんの切実な思いを綴った手紙も添えられていました。
「・・・高齢で疾患のある両親とコロナをどう乗り越えていくかでピリピリして頭が他に回っていかない現状・・・」とありました。
それでも彼が作品を送ってくれたのは、作家としての立ち位置は作品を発表するこだという思いからなのでしょう。
作品がいつもと違っていたのは、仕事として描くのではなくイラストレーターとしては気儘に描いていたものだったのです。観せるつもりも無く描いてきた絵。だからこそ作家にとって大切な絵。
「こういう時だから出品してみました」と。
千波さんの思いはまさにプリズムが今回この企画をした真髄とも言えるものです。こういう時だから自分にとって一番大切なものを観てもらいたい。
みんなで頑張りましょうというのとは、ちょっと違います。
自分はこういうふうに頑張っているよというのとも違います。
ただただ自分の生き方を確認すること。
良い格好をしたり他人に褒められたいと思ったりするのではなく、あるがままの自分と向き合う。
短い手紙の中に強さを見ました。
本当に嬉しい手紙でした。
そして実はこの作品、1週間前に届くはずだったのですが混乱の中で物流がうまくいかず、長い時間をかけてプリズムに届きました。それを咎める気持ちは全くありません。日本中、いえ世界中の人々が必死でこの騒動を乗り越えようとしているひたむきな時間の中で起きたこと。それさえも愛しいことのように思われてなりません。
絵は歌舞伎の「奴」ですね。
額込み(39×34センチメートル)
¥38,000(送料込み)