物作りの人々が目を酷使することは想像に難くありません。
ある著名なイラストレーターのOさんは学生の頃から活躍していましたから「30代の後半にはもう老眼鏡を使っていました」とおっしゃっていたことを驚いたことがあります。
またTさんは50才になろうかという頃「面相筆(極細の筆)で夜絵を描くと、そのあと1週間ほど眼鏡をかけてもぼんやりとしか見えない」とおっしゃっていました。
作家さんのなかにはは目を酷使しなくても良い作風に変えていく方もいらっしゃるほどです。
「あるもにわ」の百瀬みち代さんもそういう一人でした。
5年ほど前から目の不調から作家活動を休止しましたが、元気な頃のような目に戻ることはありませんでした。
なにしろ古布の「黒」の美しさに魅せられていたのですから、「目」にとっては厳しい毎日だったのです。「目」の痛みや頭痛との戦いの末休止を決めるのにどれほど悔しい思いをしたことか。
「老い」は残酷にも大事な作家活動さえ脅かします。
しかしこれは誰もが通らなければならない道。
作家にとって「目」はとても大切な物。そうでない人ならその人にとって筋力が大切だったり、知力だったり、・・・それぞれの衰えに恐れ戦く日は必ず、来る。
必ず来る「老い」にどう向き合うか。
ネガティブに向き合うことは得策ではありません。
初めて「老い」を認める時に戸惑いはありますが、そこからどう生きるかは人としての責任でもあるように思います。
今百瀬みち代さんは次のステージに生きています。
過去に自分が心を込めていたことに愛おしささえ持ちながら、ポジティブです。